メールマガジン【 SFRM通信 】について
難燃材料研究会の運営メンバーが執筆するコラムをお届けする「SFRM通信」。日々の研究を通じて得た気づきや、業界の注目トピックを分かりやすく、親しみやすい視点でお届けします。難燃材料に関わる方々が共感できる話題や、思わず誰かと話したくなるようなエピソードも盛りだくさん。過去の配信を振り返ることで、研究の歩みや業界の変化を楽しくたどることができます。ぜひアーカイブを活用し、難燃材料の世界を身近に感じてください。
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【 SFRM通信 】Vol.001 20240529配信
1.車載用バッテリー周辺の難燃材料
“願わくは 花のしたにて 春死なん そのきさらぎの 望月の頃” と言った気分にさせる今年の桜でした。西行は理由がなく好きなのです。
そんな感傷に浸る間もなく、産業界は日々流転しており、ある外資系化学メーカーのえらい外人さんと話していたら、「ゴリゴリの市場主義で、中国の BYD に食い込むために資本と投入し、日本は CO2低減なんてそんなことまだ信じてるの? お人よしだね。それは結果論だよ」と、やっぱり世界は厳しいのでした。
全力で世界市場を取りに行かないと、点でなく、面で。そのようなことに我々の会をうまく利用して頂きたいのです。
車両の電池利用は、日本にとって最重要課題であり、その周辺部品の難燃樹脂は日本がリーディングしたいものです。今、日本はその国プロとしては、内閣府「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」が動いています。それだけでなく、民間力でも日本の技術力であれば十分に対応できる力を皆さまはお持ちで、その民間力がこの国の源泉です。
下記セミナーも用意していますので、是非ご利用下さい。
(難燃材料研究会 会長 大越雅之)
[以降はPDFでお読みください]
【 SFRM通信 】Vol.002 20240725配信
1.難燃化による安全対策と環境対策の両立へ!
2024年は、元旦の能登大地震と JAL・海保機火災の重大事故から始まりました。特に後者では、JAL 機乗務員と乗客の冷静な対応で、JAL 機からの犠牲者はなかったですが、使用した難燃材料が退避時間を稼げたことも大きく貢献していました。世界や日本でこのことを知っている人はどの程度いるかわかりませんが、当研究会関係者は、改めて難燃材料が人命に関わる安全に寄与していることを思い知りました。
振り返れば,難燃化技術はプラスチックの量産普及に伴って、1940年代以降、ハロゲン含有材を中心に進歩しました。一方、1980年代になり、廃プラスチックの焼却時の環境対策のため、脱ハロゲン化が進みましたが、結局、ハロゲンを完全に置き換える技術はできず、環境対策と難燃化による安全対策の両立が懸案となっていました。
これに対して、近年、これまでの廃プラの焼却や熱回収から、サーキュラーエコノミーに対応するリサイクルシステムへの転換が重要になっています。ハロゲン含有材も、このようなリサイクルシステムの構築によって、環境対策との両立が可能となります。
そこで今後も、当研究会のセミナーやシンポジウムでの重要テーマとして、リサイクルシステムを含めた難燃材料の包括的な環境対策を取り上げ、積極的に検討していきたいと思います。
(難燃材料研究会 副会長 位地)
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【 SFRM通信 】Vol.003 20241007配信
1. 令和の仮面ライダーはバイクの上で変身しない
令和の仮面ライダーは安全優先なのでバイクの上で変身しないけど、幼児が遊べる変身ベルトは番組開始と同時に発売されている。ネットショッピングで送った変身ベルトの対価はアップロードされた孫の動画。α世代の孫はZ世代の親がスマホを構えると変身する。Z世代の我が子が「ありがとう」と言いながらベルトを取り出す“開封の儀”をVHSで昭和前半生まれの祖父母に送っていた。
会社人生で携帯電話は忘れられない、子どもと同い年のプラスチック工場の最初の採用製品だった。この工場設備もそうだが、90年以降の世界では、人はITに寄与する側か、ITの恩恵を受ける側か、その両方かでITの進歩の中で暮らしてきた。
でも難燃はまだ一歩追いついていない感がある。
我が子と同学年の工場の製品も難燃化に苦労した。煤だらけになって燃焼試験してV-0にあと一歩で泣いた、自分の判定と認証機関の判定のズレ具合が掴めない、レポートにある秒数だけでは状況が分らず、追い込む実験を続けた。定量的に認識して予測する手段が欲しかった。
歴史と実績から昭和の規格の燃焼試験は令和にも継続されている。孫と遊んでいると、α世代やその先の世代が安心して暮らせる環境を残すのが使命だと感じる。難燃も目視判定の試験から数値で可視化する必要を感じる。マルチコーンカロリーメーターは一つの解答だと思う。なぜ燃えてしまうのか、どこを改良すべきなのかにアプローチするために燃焼の数値化と燃焼挙動のイメージ解析は有効だと思う。AIが扱える姿にするまでは人がやりたい、やらないといけない。
そうこうしているうちに、孫のスマホには燃える試験片を撮影すると何が何度で燃えているからこの難燃剤をこれだけ添加しろと教えるアプリが入るのだろうか。
(難燃材料研究会 理事 横浜久哉)
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【 SFRM通信 】Vol.004 20250228配信
1.建材開発と難燃剤
建材開発をする傍ら、火害現場の調査に携わることがあるが、やはり最も多い原因は有機系断熱材への着火によるものである。有機系断熱材は建築過程やリニューアルの際にしか室内側に露出することがなく、竣工時には石膏ボード等の不燃材で覆われてしまい、建築基準法上、可燃物でも特に問題はない。そのため、仕上げ材が未だ施工される前やリニューアル時に有機系断熱材が露出した状態での作業は火災に対する安全対策をしっかり行うことを前提に実施される。
しかし、いくら十分な対策が取られている場合でも、溶接や溶断作業による火花や赤熱された溶断塊などが原因で着火し、火災が発生してしまうことがある。また、有機系断熱材に限らず、建材には多くの有機系高分子材料が使用されているが、可燃物であるためその難燃化は製品開発の上で重要な課題である。
一般的には有機系高分子材料の難燃化には難燃剤や有機物に置き換わる無機材料が添加されるが、物性の低下など他の性能とのトレードオフになるなど、建築基準法の防火性能基準に達しないなど容易にはいかないことがある。また、2000年の建築基準法の大改正によりコーンカロリー計が導入され、従来の試験法とは異なる評価法となり、難燃化手法もそこで大きく変わったと考えられる。
建築分野では防火材料の認定は不燃、準不燃、難燃にグレーディングされ、殆どがコーンカロリー計で試験を受けている。不燃材料の場合、20分間の試験時間で総発熱量 8MJ/㎡、最大発熱速度 200kW/㎡を超えないようにする必要があり、更にガス毒性試験も課せられ、CO の発生も抑制する必要があるため試験に合格するのは容易なことではない。
こうした課題において、難燃剤だけでは中々対処できないこともあり、何か別の処方との組み合わせが必要であり、他素材などとのハイブリッド化が建材開発には重要と考えられる。この難燃剤と組み合わせる+αの技術についてはメーカーの方々も色々と試行錯誤されているかと思うが、難燃とは無関係の他分野での素材や技術などを試してみると意外にも目からウロコのような解決法が見出されはしないであろうか。
(難燃材料研究会 理事 高橋晃一郎)
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