メールマガジン【 SFRM通信 】について

難燃材料研究会の運営メンバーが執筆するコラムをお届けする「SFRM通信」。日々の研究を通じて得た気づきや、業界の注目トピックを分かりやすく、親しみやすい視点でお届けします。難燃材料に関わる方々が共感できる話題や、思わず誰かと話したくなるようなエピソードも盛りだくさん。過去の配信を振り返ることで、研究の歩みや業界の変化を楽しくたどることができます。ぜひアーカイブを活用し、難燃材料の世界を身近に感じてください。 

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【 SFRM通信 】Vol.005 20250509配信

1.生成 AI と機械学習で変わる難燃材料研究

こんにちは、皆さん。今回は、60歳を過ぎてから始めた機械学習によるデータ分析についてお話しします。最初は「仕方なく」始めたのですが、今ではその魅力にどっぷりと浸かっています。

最初に驚いたのは、プログラムで多くのグラフがあっという間に作成できることでした。データ解析を使ってみると、今までわからなかった複雑な相関関係を確認でき、その奥深さに興味を持ちました。専門的なプログラムの知識は全くありませんでしたが、生成 AI(ChatGPT や Copilot など)が機械学習などのプログラムを作成してくれるので、簡単にデータの可視化や解析ができるようになりました。

難燃材料の開発に関しては、生成 AI に直接答えを聞いても大した答えは返ってきませんが、機械学習は難燃剤開発の有効な手段になると考えています。ただ、難燃技術では定量化が難しい規格も多く、機械学習の利用は難しいと感じていました。その解決策の一つとして、マルチコーンカロリメータを使った定量化方法があります。UL94 燃焼試験のように定量化が難しい試験でも、燃焼状態の定量化ができます。得られたデータを用いて最適な予測モデルを作り、機械学習が可能となり、これまで見落としていたデータのパターンやトレンドを発見できるようになりました。これにより、新しいアプローチや技術の開発が促進され、難燃材料の性能向上に繋がっています。

将来的には、データを覚えさせることで、生成 AI がプラスチックの難燃化に有効な答えを出すようになるかもしれません。そんな未来が楽しみですね。私たちの研究会でも、これからますます機械学習や生成 AI の活用を進めていきたいと思います。

(難燃材料研究会 運営委員 野寺)

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【 SFRM通信 】Vol.006 20250825配信

1. 変わらないもの

長く変わらぬ技術が身近にあった。酸化アンチモンである。

ご存じの通り、プラスチックスの難燃化のためにハロゲン化合物と共に使われる。第二次世界大戦時にパイロットの焼死を防ぐことを目的に開始された研究が発端と聞く。その後、臭素系化合物と酸化アンチモンの組合せが見いだされ、電気製品や建材等でのプラスチックス普及に伴い、難燃要求の高まりに沿う形で利用が拡大した。

ところが欧州で、埋立場の廃プラから流出した臭素系化合物による環境汚染が問題視されるようになった。対応策としてリン化合物や金属水酸化物が登場、臭素にとって代わるかに思われた(一部ではさらには非臭素非リン系、難燃剤フリーまで・・・)。

筆者も20年以上そういった技術に関わってきた。

ところが今年に入り、なぜか酸化アンチモン不足に悩まされている。原料メタルの最大産出国が輸出を厳しく規制して混乱が生じたのだ。一説には、ある国の高関税政策やハイテク輸出規制に対抗したと聞く。

しかしながら太陽電池の最大輸出国であるかの国ではガラスパネルの透光率向上を目的に酸化アンチモンを使用しており、北の隣国からの輸入が侵略戦争に対する欧米の経済制裁で滞ったため自国産の輸出を止めた、という側面もあるそうだ。

臭素系化合物でさえ時代とともに変化しているのに、酸化アンチモンだけは変わらない。足元を気にしてややもすると小手先の改良だとか特殊解探しに傾倒しがちだが、腰の据わった研究で得られる基盤技術の大切さに改めて気づかされるところとなった。

(難燃材料研究会 運営委員 三枝)

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【 SFRM通信 】Vol.007 20251107配信

1.COP30から適材適所を考える

本メルマガ発行時はCOP30開催前後と思われます。国内建設業界では環境視点の木材活用推進が継続されていますが、なんと(社)日本建築学会は1959年臨時大会で「木造禁止を含む決議」を採択していました!

雁屋哲さん原作漫画『美味しんぼ』2010年・第592話・テーマ「続・食と環境問題」の「日本家屋の国産材使用率が著しく低い一因は、建築学会が木造を否定したこと」との趣旨の台詞が話題となり、翌年「木造禁止を再考する」と題する大会パネルディスカッションが開催されました。

その趣旨説明では、昭和20年代に全国で相次いだ都市大火に対する耐火建築促進法制定、昭和31年の耐火構造の建設省告示化等から時代の流れは都市不燃化一色であり、昭和30年閣議決定「木材資源利用合理化方策」でも戦後の木材枯渇から用途・規模に応じた木造適用範囲の縮小が謳われ、同年発生の伊勢湾台風被害をうけた決議ではないかと解説されています。木材は豊富で有用な資源ですが、燃える・腐る・狂う、著しい強度異方性等から従来のセメントコンクリート・鋼材等と比べ扱い難い建材です。

木材に限りませんが、あまり効果も明確でない環境対応一本槍ではなく、材料特性に応じて適切な改質等を施して適材適所で使うのがよいと考えられる昨今の国内外動向であり、是非、皆様のお考えも頂けますと幸いです。

(難燃材料研究会 運営委員 高橋)

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